2024年6月 武士が学んだ馬術その3

 

 前回は江戸時代に武士が騎乗した馬は現在一般に見られるサラブレッド等の近代軽種馬とは異なるものであったことを記した。それらは日本の在来馬の近代軽種馬と異なる特徴として体格は小柄であるため、スピードには劣るものの体格のわりに力があること、「側体歩」という前後の肢を片側ずつ左右交互に動かす変則速歩で歩ため、上下動が少なく騎射に向いていること等がある。

 明治時代以降、西洋よりサラブレッドやアラブ等の近代軽種馬が導入されたため、日本在来馬の数は減少したものの現代にも日本在来馬は残っている。以下現在に残る日本在来馬について記してみたい。

 現存する在来馬は8種。8つの馬種は品種であり遺伝子的には地域個体郡程度の差しかないがそれぞれに特徴があり体形が異なっている。

 

1.北海道和種

一般に道産子の通称で知られており、鎌倉時代に持ち込まれた南部馬が先祖とされている。体高は125センチから135センチ、体重は350キロギラムから400キログラムと日本在来馬の中では比較的大型である。

小型の馬であるが1頭あたり、113から226キログラムの荷物を駄載できる。また、厳しい自然の中の生活で鍛えられた丈夫な体質、原野を走り回る強靭な体力を持ち合わせている。

 

2.木曽馬

一説では紀元前1世紀に漢で改良された「蒙古草原馬」は2~3世紀に朝鮮半島経由で渡来したと言われている。この馬が山岳地帯である木曽地方で飼育された影響で木曽馬となったとされている。

体高は135センチ程度、体重は350キログラム程度の中型馬である。

短足胴長で体幅が広いという特徴があり、山間部で飼育されていた為、足腰が強く頑健である、新田義貞の軍が用いた軍馬の骨が遺跡より発掘され、ⅮNA鑑定の結果、木曽馬であることがわかっている。

 

3.御崎馬

江戸時代前期、高鍋藩の秋月家が軍事に欠かせない馬の放牧を都井村御崎牧(現在の御崎牧場)の藩営牧場で飼育したのが始まりとされている。

体高130センチ程度、体重は300キログラム程度の中型馬である。

体形はがっちりして頭部は大きいが農耕馬として育成された他の日本在来馬と比べると足が細いなど江戸時代の乗用馬の特徴色濃くでている。

4.対馬馬

古墳時代に朝鮮半島から日本にもたらされたと考えられている。体高は125センチ程度、体重は250キログラム程度であり、北海道和種などの中型馬とトカラ馬などの小型馬の中間に位置するとされる。険しい山道の対馬にあって農耕馬として木材や日用品の運搬に用いる駄馬として生活に欠かせない存在であった。負担力に富み、130から150キログラムの荷物を運搬することができる。

 

参考文献

 

 日本馬事協会ホームページ