2023年 5月 心形刀流について
前回まで3回にわたって幕末江戸三大道場と言われた「北辰一刀流」の「玄武館」、「鏡新明智流」の「士学館」、「神道無念流」の「練兵館」をしてきた。
今回は前記三道場に加えて幕末四大道場とも言われる「練武館」の「心形刀流
」について記してみたい。
前述のとおり「練武館」は他三道場と同様に幕末期に江戸で隆盛を誇った道場であったが、維新派の志士の門弟が多かった三道場と比べて、佐幕派の旗本の門弟が圧倒的に多かった「練武館」を除外する空気が維新後に形成されたとの説もある。
心形刀流は妻片貞明より「本心刀流」を学んだ伊庭秀明が天和2年(1682年)
に創始した流派である。伊庭秀明は本心刀流に学んだ諸派の利点を加えて心形刀流を作った。現在、心形刀流には以下の技法が伝わっている。
「抜合(居合)表六本・裏六本」
座った体制から相手の攻撃に大刀で応じる技
「組太刀 大太刀之形 六本」
大刀の攻撃に対して大刀で応じる組太刀
「組太刀 小太刀之形 六本」
小太刀で応じる組太刀
「二刀之形」
大刀での攻撃に対し二振りの刀で応じる剣術技
「坐突・柄捕り」
居合の奥伝である柔術形
「枕刀」
枕刀と言われる槍・薙刀状の武器を用いた形
また、心形刀流の名の由来は「心の修行を第一義とし、技の錬磨を第二とする。即ち、技は形であり心によって使うものである。心正しければ技正しく、心の修行足らざれば技乱れる。そして、この技が刀の上に具現されるもので、流名の示すごとく心形刀流となる」という考え方から来ている。
私見ではあるが「居合」「組太刀」「小太刀」「二刀」「槍・薙刀」といった技法
体系は私が学ぶ大石神影流剣術の技法体系に非常に近いように感じる・
そして心刀流の名の由来にある考え方、「心の修行を第一義とし、技の錬磨を第二とする。心正しければ技正しく、心の修行足らざれば技乱れる」は常日頃から森本先生が言われていることと全く同じである。
参考文献
日本武道全集 昭和41年 今村嘉雄ほか(編)
心形刀流ホームページ
写真は心刀流伊庭家の菩提寺である貞源寺