2023年12月 馬の博物館訪問

秋季特別展「戦国武士と馬」観覧

 

 今回は馬の博物館の訪問について記してみたい。武道史の研究なのになぜ?と疑問に思う方が多いと思われるが、この馬の博物館では定期的に戦国時代の馬と武士の関わり等にフォーカスした展示を行っている。2019年には秋季企画展「名馬と武将」と題して戦国時代の武士の鎧、当時の馬に付けられた鞍や鐙等が展示された。中でも興味深かったのは西国の鎧は軽装のものが多く、東国の鎧は重装のものが多いという話であった。

これは当時の日本では良い馬の産地が東国に多く、そのため重装の鎧を身に着けても移動が容易であったこと。

翻って西国では東国ほど馬産が盛んでなかったため、軽装の鎧が多かったという説があるということであった。

 またテーマ展「中川コレクション 刀装具に描かれた馬のおはなし」では馬をモチーフにした目貫(めぬき)、笄(こうがい)、小柄(こづか)、鍔(つば)、縁頭(ふちがしら)といった刀装具が展示されていた。

 今回の秋季特別展「戦国武士と馬」では馬術と馬具に注目して戦国時代の武士と馬について紹介されていた。

 武士を「弓馬の士」、武芸を「弓馬の芸」という呼び方があるように武士が弓術と馬術を習得することは不可欠であった。歩兵が大きな役割を果たすようになり、馬上での戦闘が減った時代になってもそれは変わらず、各地の武士は騎射の技術を磨いていた。戦争が大規模化した戦国時代は需要の高まりに応じて馬具が大量に作られた時代であった。華麗な装飾を施した鑑賞品から大量生産された規格品まで多種多様な馬具が登場した。

 今回の展示で興味を引いたもののひとつは今回初公開された「黒漆檜扇海有軍陣鞍」であった。これは戦国時代に作られたもので、甲冑を着用して騎乗するのに適した余分な装飾を排した武骨な作りが特徴である。

 また、江戸時代に使用された「犬追物弓具」も展示されていた。「犬追物」とは鎌倉時代から始まったとされる日本の弓術の作法・鍛錬法であり、流鏑馬、笠懸とともに騎射三物のひとつに数えられる。展示されていた矢は「犬射引目」という犬を貫くことがないように加工された特殊な鏑矢であった。

 今回は馬術、弓術といったものを中心に展示されていたがとても興味深いものであった。今後も武士の時代にフォーカスされた展示があった場合は後学のために訪れたいと考えている。

参考文献

 

秋季特別展「戦国武士と馬」出品目録