2023年 7月 直心影流について

 

 前回は幕末に設置された幕府講武所について記した。そこで教授された剣術流派には5月にレポートした「心形刀流」、4月にレポートした「神道無念流」、3月にレポートした「北辰一刀流」の他直心影流・田宮流・一刀流忠也派・柳剛流があった。今回はそのうちの一つ、「直心影流」について記してみたい。

 「直心影流」の正式名称は「鹿島神傳直心影流」といい、薩摩藩に伝わったものは「真影流」「薩摩影之流」と言われる。

 流祖は松本備前守紀政元であり初代とされているが、直心影流の名乗りは第7代の山田光徳からである。

 直心影流には「法定之形」「韜之形」「小太刀之形」「刃挽之形」「丸橋之形」の5つの形が伝えられているが分派が多く、伝えられる派によって内容は変化している。

 「法定之形」は八相発破、一刀両断、右転左転、長短一味の4本よりなる直心影流の根本の形である。書道の楷書にあたる形とされ、この形が身についてくると間合い、気合が手に入り、筋骨も固まり、手の内の締まり具合も会得されてくると言われる。

 「韜之形」は龍尾2本、面影2本、鉄破4本、松風2本、早船2本、曲尺、

円連の14本からなる形である。作ったのは小笠原源信斎と言われる。半足での間合いの取り方等を身に着けることを目的とする。

 「小太刀之形」は風勢、水勢、切先返、鍔取、突非押非、円快の6本からなる形である。長に対する短をもって勇気を養うとされる。

 「刃挽之形」は「法定之形」の裏として真剣をとっての手の内の強弱、筋の良し悪しを吟味修正することを目的とする。「丸橋之形」は八相、堤、水車、円快、円橋の5本からなり、動静一致して至誠至大の神意を養うことを目的とし、直心影流最高の極意とされている。

 直心影流の有名な門人として幕末の男谷信友、その弟子の島田虎之介がいる。また、門人の勝海舟は男谷信友の従妹にあたる。

 

 参考文献

  日本古武道協会ホームページ

  日本武道全集 昭和41年 今村嘉雄ほか(編)

  下記写真は男谷信友屋敷跡(現在は両国公園)